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お嬢様♡レッスン

第113章 葛城の闘い

「ですが、それに甘え会社の為に働かない社員は必要はないと考えています」

葛城の視線は、相変わらず向い側のビルに注がれたまま、話を続ける。

「死んでいる種に肥料をと水を与えても芽は出て来ない。それならば、その種は捨てて新しい種を植えるべきでしょう?今は、それを見極めている時なんです」

副社長は葛城の言葉を身動ぎもせずに聞いている。

「貴方の事を解雇するつもりはありません。貴方は社長と会社をここまで大きくされて来た方だ。お客様からの信頼も厚い」

「では…橘クンを…?」

黙って葛城の話を聞いていた副社長は葛城の背中に尋ねた。

葛城は振り返らず、そして彼の質問には答えずに、彼に橘あかりを預ける様に申し入れた。

しかし、秘書が付かないとなると、色々と仕事に支障を来たす。

「だが…」

「代わりの秘書なら、本部から呼び寄せます。暫くはその秘書に業務をお任せ下さい」

「…今まで通りに仕事が出来るのであれば…」

「了承頂けたようで何よりです」

そう言うと葛城は振り返り、にっこりと笑顔を見せた。

「早速、代わりの秘書を……」

葛城がそう言うと、それを聞いていたかのように、ドアをノックする音が聞こえた。

葛城はドアまで歩いて行くと、内鍵を外し、扉の外に居た人物を招き入れる。

入って来たのは、短髪で清潔感のある背の高い青年だった。

「初めまして。本部より参りました黒崎と申します」

そう言って青年は深々とお辞儀をしてから、顔をあげると爽やかな笑顔を見せた。

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