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お嬢様♡レッスン

第113章 葛城の闘い

「お呼びでしょうか?」

橘あかりが葛城の下へとやって来て、彼のデスクの前で立ち止まると声を弾ませてそう言った。

「副社長からご説明があったかと思いますが、少しの間、貴女を私が預かる事になりました」

葛城は両肘をデスクに付き、両手の指を絡める様に顔の前で組んで、彼女の顔を見上げながらそう言うと、橘は嬉しそうに笑みを深くする。

「貴女に与えられた期間は最長で1週間。それ以内に秘書業務をマスター出来なければ、辞めて頂きます」

葛城がそう言うと、橘の笑顔が一瞬凍りついたが、彼女には副社長との約束がある。

まだ、書面には起こして貰っていないが、二人の会話の音声はスマートフォンに録音しておいた。

だから大丈夫だと、橘は気を落ち着けると再び笑顔を浮かべる。

「仕事が出来ない人間を雇って置く程、この会社には余裕がありません。貴女の仕事ぶりですと、どの部署にも回せません。そうなると辞めて頂くしか他の選択肢がありません」

そう言うと葛城は組んでいた手を解き、革張りの背凭れへと深く背中を預ける。

そして橘をじっと見据えた。

「ふふふっ。取締役はご冗談がお好きなんですね?私をクビにするおつもりでしたら、とっくにされていた筈でしょう?」

「それは会社の慈悲ですよ。この研修期間中に心を入れ替えて仕事に励む社員は、そのまま残す。そして変化の見られない社員は、他所に移動して貰うか辞めて頂く」

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