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お嬢様♡レッスン

第115章 別離の刻(わかれのとき)

そうでもしなければ彼女を引き留めてしまいそうだったから。

葛城がどんな想いで、自分達に綾芽を託してくれたのか。

彼女を信じ、自分達を信じ、遠い日本と言う国で彼女の帰りを待つ彼の気持ちを考えれば、そんな事は出来る筈もない。

ともすれば、『行かないでくれ』と縋ってしまいそうな気持ちを押し殺すには、こうして笑い合うくらいしか彼等には出来ないのだ。

思い残す事がないようにと、散々身体を重ね想いを伝え合い、時には街へ出掛け、様々な思い出を作り絆を深めて来た。

これが今生の別れという訳ではない。

男女の関係から、友人へと愛の形を変えるだけだ。

一度味わってしまった甘い蜜の味を忘れる事は出来ないが、それはきっといつか熟成され、芳醇な味わいを持つ思い出となるだろう。

今は未だ辛いけれど。




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