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お嬢様♡レッスン

第115章 別離の刻(わかれのとき)

「フレデリク、忘れ物はない?」

フレデリクがヘンリーの運転する車で寮へと戻る為、綾芽とウィリアムは一緒に車に乗り込んでいた。

「もう!大丈夫だよ!本当に綾芽ったら母様みたいだ」

心配する綾芽に、そう言って笑うフレデリク。

「だって…」

「それより、君の方だよ。帰ったらこちらには中々来れないんだから、忘れ物をしないようにね!」

「分かっているわよ。フレデリクに買って貰った本も、ウィリアムに買って貰ったドレスもちゃんと梱包しました!」

「そう?慎吾から貰った指輪は?」

「ちゃんとしてます!ほら!」

そう言うと綾芽は左手を掲げて見せる。

それを見て、一瞬ではあるが、フレデリクとウィリアムの心はとても細い針で突かれた様な痛みが走った。

フレデリクを送った後、綾芽はヒースロー空港へと到着する葛城に引き渡される事になっている。

彼女はもう葛城の婚約者の顔になっていた。

ロートマン兄弟の仮住まいからイートン校までは車で30分足らずだ。

お喋りをしていると、あっと言う間に着いてしまう。

イートン校は1440年に創設された古い歴史を持つ、男子全寮制のパブリック・スクールで、ロンドンの西の郊外にある。

ゴシック様式の建物が立ち並ぶその様は圧巻で素晴らしいの一言である。

「ここが…。ウィリアムの母校でもあるのね?」

門の前に降り立つと、綾芽は感嘆の声を上げる。

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