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お嬢様♡レッスン

第115章 別離の刻(わかれのとき)

「でも、私は記憶を取り戻してしまったし、私が一番に求めている人も分かってしまった…」

治まった筈の涙が、再び溢れて来る。

「沢山…良くして貰ったのに…貴方を選べなくて…ごめんなさい…」

「いいんだよ。そんな事は気にしなくて…。僕が好きでやっていた事なんだから…」

ウィリアムは自分の肩に載る、綾芽の頭を優しく撫でながら、宥める様にそう言った。

「でも…もし…君が慎吾と何かあったら…」

そんな事が起こる訳がないのは分かってはいるが、言わずにはいられない。

「その時は僕達のところへ帰って来てくれたら…嬉しい…」

「ウィル…。それは…っ」

「ふふっ。冗談だよ。分かってるんだ。そんな日が来ない事は…」

そう言うと、ウィリアムは綾芽の頬に手を添え、彼女の蟀谷に口付けを落とす。

「慎吾と幸せにおなり?僕は君が笑ってくれていれば、それで幸せだから…」

「ウィル…っ!」

綾芽はウィルの優しい声に、そして彼女の頭を撫でる優しい手付きに、涙が止まらなくなった。

「もう…泣かないで?」

ウィリアムは綾芽の顔を覗き込む。

涙に濡れた頬を拭いながら、柔らかいそれに軽く口付ける。

彼女が自分との別離を惜しんでくれているのだと分かって嬉しかった。

それと同時に切なくもあった。

二人はどちらからともなく、互いの身体に両腕を絡ませ、しっかりと抱き合う。

車が空港の駐車場へ着いてからも、二人は暫くそのまま抱き合っていた。

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