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NAHEMA

第2章 本章

彼女と初めて会ったとき、彼女のほうをちらちらと見る俺の視線と、空を漂わせる彼女の視線が偶然交わるだけで、俺の胸は高鳴った。



二度目に彼女と会ったとき、彼女が自分のことを見ていることに気づいた俺は、柄にもなく嫌に緊張したりもした。



三度目に彼女と会ったとき、俺を見ている彼女の顔がわずかに綻んだだけで、天にも昇るくらい嬉しかった。



そして、四度目に彼女に会った、夜。


 「今日は、そっちのバーテンさんのお勧めをもらおっかな。」


いつもその日の気分を告げて、
バーテンダーお勧めのカクテルを一杯だけ楽しむのが、
彼女のスタイルだった。


 「翔はバイトで、
  バーテンダーではないんですよ。」


店長がそんなことを言ったけれど、
シェーカーを振っている姿を一度も見せたことのない俺が、
ただのバイトだということは、
彼女はもちろん知っていたはずで。


 「そっか。
  でも…
  翔くん、っていうの?
  翔くんもここでバイトしてたら、
  それなりにカクテルの種類は覚えたでしょう?」


小首をかしげて俺に問いかける彼女の美しさに見惚れる俺は、
彼女の言葉に導かれるようにうなずいた。


彼女の濡れたように艶めいた唇が弧を描く。


 「そうね、今日の気分は…
  恋に、落ちてしまったかもしれない…
  そんなどきどきした気持ち、かな。」


長い睫毛を伏せ、静かに口にした彼女のリクエストに。


 「スクリュードライバーはいかがでしょうか?」


俺が提案したのは
「あなたに心を奪われた」
という意味をもつカクテル。

誰でも知っている、ありきたりなカクテルだったけれど。


 「じゃぁ、それを。」


彼女はその意味を知っているのか、ふっと笑った。

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