NAHEMA
第2章 本章
「あの…」
俺に背を向けた彼女に、
気付けば俺は声をかけていた。
彼女は俺の声にゆっくりと振り向いて。
やっぱり完璧な笑顔で。
こんな若造の考えることなんて、全てわかっているというような、余裕の表情をして。
まるで、こんなことはいつものことだといわんばかりの笑みを浮かべて。
俺の白シャツの胸ポケットに、
無言で小さなカードを差し入れた。
「おやすみなさい。」
立ち去る後姿さえ完璧な彼女に、
俺はそれ以上声をかけることはできず、
彼女の細い足首を見つめながら、
真っ赤な靴底のハイヒールが奏でる音が遠ざかるのを、
ただ見送ることしかできなかった。
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