誰かお願いつかまえて
第5章 夢か現実か
「―ねぇ、優也の彼女だったりしないの?」
『えぇ?!私がですか?!そんなことありませんよ!
岡崎さんはもっと可愛い彼女がいると思います』
(あー、今全否定されたよ…優也どんまい……
あんた、彼女いることになってるよ…)
鏡越しに会話をする彼女には悪気は一切なさそうだ。
「そう……
髪はどうする?なんかイメージあったりする?」
『あの、実は髪切りに来るって知らなくて…
お任せできますか?』
「あら、そーなの?分かったわ……そういえば、短くしろって優也が言ってたけど?」
『あ…じゃ、それでお任せします!』
「はーい」
たぶん岡崎さんは私が大地のために髪をのばしてたことを気にしてくれているんだろう。
(名前の通り優しいんだよな…)
「波香ちゃんの髪、細くてサラサラでいいわねー!
瞳の色と同じで茶色っぽいのも!」
チョキチョキとハサミを入れながら褒めてくれる澪玲さん。
『そうですか?ありがとうございます』
「ほんと、女として羨ましいわ!
…そういえば、優也と同じ会社で営業やってるんでしょ?
女性にはハードすぎない?うちの優也なんて実家に帰ってくると、疲れたしか言わないし…」
『私は岡崎さんほど働いてないですから…
それに体力だけはあるんですよね!
同僚から頭の中身が抜けてる、とか言われることもあるんですけど――』
(私が優也呼びすれば合わせてくるかと思ったけど、この子本当に優也のこと眼中にないのね……… )
自分の弟のような存在である優也に媚びない女性は久しぶりだな、と澪玲は感心していた。