誰かお願いつかまえて
第6章 ペットでもいいから
どのくらいそうして考えていたか分からない。
日は完全に沈んでいて辺りは暗闇に包まれている。
「…帰るか」
仕方ない。
そう思って立ち上がる。冷えた体に冷たい風が容赦なく吹きつける。
(…でも)
もし、もう1回インターホンを押して出てくれたら。
少しくらいそばにいてもいいだろうか。
そんなことを思ってもう1度インターホンを押した。
ピンポ-ン
やはり、反応はなかった。
「風邪、ひくなよ…」
聞こえるわけがないのに俺はそう言って歩き出した。
――この日、川端は彼女が翌日の約束のことで頭がいっぱいになっていたことも、シャワーを浴びてすぐに眠ってしまったことも知らなかったのだ。
彼女もまた、自分を気づかってくれるもう1人の男が訪れたことを知らなかった――――