誰かお願いつかまえて
第2章 仕事人間
もちろんデスクワーク苦手で済むわけないから、その日の仕事が終わらなければ家に持ち帰ってでもやる。
「―――いつもありがとう。
幸村さんはいつも仕事がんばるね」
『いえいえ。ウチの岡崎や川端に比べたら大したことないんですよ。
―それでは、またお伺いさせていただきます』
労いの言葉を頂いて、次のお客様のもとに向かう。
(そういえば、今日は資料作成は終わらせられないよな…家でやるしかないか)
残業すればいいのかもしれないが、そうすると結局川端や岡崎さんの手を煩わせることになる。
この前同窓会に行くのに1人だけ残業を回避した私を川端が引き止めたように、
明確な決まり事はないが残業は3人で協力して早く終わらせるようにしている。
つまり、私が残業してると川端や岡崎さんが手伝ってくれるので申し訳なくて…
ふいに自分の散らかった机と部屋を思い出して、
大地のことも思い出してしまった。
(…大地の奥さんはきっと専業主婦で片付けとか得意なんだろうな…)
想像してから振り払うように首を振った。
(今は仕事でしょ!しっかりしないと!!)
正直なところ、大地とのことは吹っ切れたとは到底言えない状態だった。