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誰かお願いつかまえて

第4章 俺はお父さんなんかじゃない



幸村から事情を聞いたとき怒りのあまり言葉が出なかった。


キス寸前までしたのか!?
しかも彼女の気持ちを裏切って…

幸村の話からの俺の推測だけど、そいつはきっと幸村の気持ちを分かっていたはず。
あえて突き放すこともせず、しかし告白する隙は与えない。

それで彼女が傷つくことも分かっていたはず。傷つけば自分のことを罵って忘れてくれるとでも思ったんだろうか。


幸村は一見大雑把に見えて根は繊細なやつだ。
中学時代のことは分からないが、彼女のことを強いやつだと思っていたんだろう。

(幸村が弱い部分を晒せる人は誰もいないのかもしれない…)


体だけの関係にならなくてよかった、自分を大切にしろ、と言ってやるとポロポロ泣き出した。

俺は初めて幸村が泣くところを見た。



手を口元にあてて声を押し殺し、涙だけが頬をつたう。
普段何があっても泣かないからというのもあると思うが、驚かせるほどの迫力があった。



大げさではなく、その姿は美しいと思った。




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