誰かお願いつかまえて
第4章 俺はお父さんなんかじゃない
『っ!いやっ!離して!』
身をよじる彼女を無理やり抱きしめた。
ビクッと体がこわばり、抵抗をやめた。
「…大丈夫だから」
こんなときに気の利いた言葉をかけられない自分が許せなかった。
どのくらいそのままでいただろう。
『~んっ!』
幸村がまた抵抗を始めたので離した。
『…帰ってください』
「帰らない」
『っ!どうしてですか!?』
ようやく顔を上げた彼女の瞳は潤んでいて、とても哀しそうだった。
「幸村を一人で泣かせないため」
そう言うとまた俯いてしまった。
『…私は、1人でいいです』
そう言って部屋の奥に行ってしまった。