誰かお願いつかまえて
第4章 俺はお父さんなんかじゃない
俺もあとについていくと片付いているリビングが目に入る。
飾りなどは少なくて、幸村らしい。
カチャ
リビングの前の部屋の扉が閉まった。
(寝室か…?)
扉の前に立つとくぐもった泣き声が聞こえる。
自宅ですらも声を上げることなく泣いている。
自分がいるせいだと思ってもほっとけなかった。
カチャ
俺が部屋に入っても幸村はそのまま泣いていた。
箪笥や窓にスカートとブラウスのハンガーが下がっている。今日着る服を選んでのことだろう。
「…!」
机を見ると山のように書類が積んであった。
手に取ってよく見ると、商品の説明や趣味の話で出てくるものをまとめていたり…営業が上手くいくように工夫していたのだろう。
パソコンのそばには最近の資料も置いてある。
(今週残業してなかったのは、家でやっていたからか…)
眠れなかったのだろうか。
膨大な量の資料を見ればほとんど寝ずにやっていたことが分かる。
会社でも眠そうな素振りすら見せなかったというのに。
ベッドに横たわって肩を震わせている幸村を見つめた。
いつも気丈にふるまっている彼女の弱々しい姿。
(幸村が…壊れてしまう……)