
先生…お願い。早く治して・・・
第91章 久しぶりのICU治療室
伸「大丈夫…出来るだけ痛くないように触るから…ね?」
出来るだけ私が怖がらない様に、優しく微笑み声を掛けて無理に押さえつける様な事をしない
私は小さく頷いた
そんな私に伸先生はニコッと微笑んだ
伸「よしっ、じゃぁ〜左腕、上げてごらん?」
私は言われた通り少し左腕を上にあげた
伸「綾ちゃん、頑張ってここまで上げておこうな…」
中途半端に上げた腕を伸先生に持ち上げられた
やっぱり怖いっ…
気付けば目に涙がたまる
伸「ん?どうした?怖い?」
先生はニコッと微笑み私の目を見つめる
返事をしたら溢れ落ちそうで、そのまま口を噤んだ
伸「こんなに注射されたり、痛い事されてたら診察されるだけでも怖いよな…。大丈夫!先生綾ちゃんの事、押さえたりしないから、自分で頑張って上げてて?ね?」
綾『…ヒック……ヒック…ッ…』
伸「綾ちゃん、泣かないで。先生絶対強く押したりしない…約束する。先生ね、指の感覚で触診するから、綾ちゃんが泣いて身体に力が入ると正確に診てあげれないから、泣くの頑張って我慢してくれる?ん?」
伸先生はとても優しく、嘘を言っている様には感じられなかった
だから私は伸先生に『うん』と頷くと、
もう一方の手で涙を拭った
伸「じゃぁ、最初にちょっと脇の辺りに触れるよ。出来るだけ痛くない様に優しく触るけど、もしも痛かったら我慢しないで言って?」
綾『うん。』
伸先生は指4本の腹で脇の下に手を当てる
緊張でつい力が入る…
伸先生の顔はとても真剣で、微かな異変をその指から感じ取ろうとしているのは私にも分かる…
伸「ごめんね。怖いよね?痛くない?大丈夫?」
私の事を気にかけ、ちょくちょく声を掛けながら触診してくれた
綾『うん』
伸「もう少しこんな感じで触っていくね?怖くないから、痛かったら言うんだよ?」
少しずつ緊張が解れる…
いつもなら、こんな痛い場所、
緊張と恐怖で泣いていたのに、伸先生の診察
初めて怖くない…そう思えた。
