
先生…お願い。早く治して・・・
第66章 先生との初デートなのに…治療?(後編)
私は先生のその言葉にホッとしたのも束の間…
「今度は左腕、頭の上に上げてごらん。」
『えっ?』
『バンザイするみたいに、左手上げて!』
私は恐る恐る左腕を頭の上に持っていく…
先生は私の左腕を掴むと、しっかりと上に上げさせた。
「いいかい、痛かったら言うんだよ」
『待って!!何するの?』
「さっきと同じ、少し触るだけ。」
左腕を上げられ、胸ならず脇の下まで丸見え状態…
もうヤダよ…恥ずかしいより怖い…
私の左腕は先生の手によって、動かない様にしっかりと押さえられたままだ。
石川は綾の脇の下に手を回すと、親指で脇の下のくぼみを優しく押した…
『んッ…』
言葉にならない短い言葉と共に、石川のその指から逃れようと身体が反射的に動いた。
「痛い?」
『………。』
先生の言葉に“うん”と言えず、目を逸らしたまま口を噤んだ…。
石川は鼻から小さく息を吐くと、先程より少し下にずらしまた触診していく
『んっ…ヤダッ。』
またもや身体をよじる綾に
「ごめん、この辺痛いな…。」
まるで痛い事を知っていたかの様に、優しい顔で綾に話しかける…
石川のその言葉に一気に綾の目には涙が溜まる…。
「大丈夫だから泣かないの。そんなに悪くないから。」
『だって……ック…』
「そこは少し痛かったとしても、いつも痛みの出る乳頭部分は痛く無かったでしょ?」
『んぅ。』
涙目でコクンと頷く
「なら大丈夫、治療だっていつもと違ってすぐ終わる…だから泣かなくていいから。」
『今やるの?』
不安の表情を向ける綾に…
「んぅ。明日まで待ってたら、いつもの様に乳首部分に注射しなくちゃいけない位になるかもしれない。でも今やれば、やらずに済む可能性は充分ある。大丈夫!すぐに終わるよ」
優しい微笑みを向ける石川とは裏腹に
綾の頬にはポロポロと涙が伝った
こんなに楽しくて、特別な日なのに…
