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第9章 バイト初日

「俺、恋奈の事、真剣に考えてるよ。だから、大事にしたいし、親御さんの心象を悪くするような事、あんまりしたくない」

なぁんて、ちょっと決め顔で言ってみる。

「アキちゃん…」

心なしか恋奈の瞳が潤んでいる様に見える。

俺の言葉に感動したかな?てへっ!

「俺は、顔を見れて満足したよ。こんな時間に呼び出してゴメンな?危ないから送るよ?」

「ううん。大丈夫…。あの、あのね?」

「どうした?」

「アプリに関連している事か分からないんだけど…」

「うん?」

「恋奈の学校でね、この前、男子生徒が心臓発作で亡くなったの…」

「うん」

「でね、聞いた話なんだけど、その子あのアプリをやってたらしいの」

「何だって?」

「亡くなった時の顔が物凄かったらしいの。何ていうか…恐怖に引き攣った顔だったんだって」

「それ、何情報なの?」

「クラスの男の子。死んじゃった子と仲良かったんだって」

「マジか!」

「その子の話だと、最近、学校に来てなかったみたい。迎えに行っても、部屋から出て来なかったんだって。ブツブツ何かを呟いてて、すっごく変だったんだって」

「鈴木と状況が似てるな…」

俺はますます鈴木が心配になった。

「恋奈!情報を有難う!」

「恋奈、少しはアキちゃんのお役に立った?」

「馬鹿。恋奈はいつも俺の役に立ってくれてるよ?恋奈は俺に元気とか勇気とか色んなもの、いっぱいくれてる!」

「そっか…。アキちゃんのお役に立ってるなら嬉しいよ」

俺の顔を見上げて『えへへ』と照れた様に笑う恋奈。

あー…。

駄目だ。

押し倒してぇ!!

しかし、そこはグッと我慢だ、俺!

今日の所はチューだけに…って余計に我慢出来なくなりそうだ。

「もっと、何か情報がないか聞いてみるね?」

「ああ。有難う」

「それじゃあ、私、帰るね!」

「あ!送るよ!」

「大丈夫、直ぐ近くだから!」

そう言うと恋奈は走って行ってしまった。

今、追いかけたなら、彼女の家が何処なのか分かるだろうか?

でも、ストーカーと間違われて通報されたら嫌だな。

それに、恋奈が敢えて俺を家まで連れて行かないのには何か訳があるのだろう。

俺は彼女を信じてる。

だから、時期が来るまで待とう。

俺は彼女が消えて行った方を暫く見ていた。

もし悲鳴が聞こえたら直ぐに駆けつけられる様に。

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