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第11章 交霊

「それについてなんだけどね、キミの彼女は”運営”している事務所があるって言ってたんだよね?」

所長が俺の顔色を窺いながら、尋ねて来る。

「ええ。言ってましたよ?事務所が入っているビルって言うのも確認しました」

俺がそう答えると、所長は綺麗な眉を歪めて考え込んだ。

何から何まで様になりやがるな、おい。

軽く嫉妬する。

所長みたいな顔だったら、人生バラ色なのになぁ…。

「キミは阿保なのか?顔だけで世の中が渡り切れる程、甘くはないよ?」

ううっ…。

また、心を読み取られた。

「なぁ、キミの彼女に今度逢わせてくれない?ちょっと話を聞きたい」

「ええ~!?所長、イケメンだから逢わせたくないなぁ…」

恋奈とはラブラブな仲だけど、もし所長の事を好きになられたら、俺、立ち直れない。

「安心しろよ。マスクにサングラスしておくから」

そう言って所長はゲラゲラと笑った。

う~ん…。

それって変質者じゃん!

「じゃあ、俺は合わない。ハナに話を訊いて貰う。それじゃあ駄目か?」

「俺が話を訊いて来るんじゃ駄目なんですか?」

「ああ、出来れば逢って話がしたい。と言うか確かめたい事がある」

ちょっと深刻な顔でそう言う所長に嫌な胸騒ぎを覚えた。

所長に奪われるとか、そんなんじゃなく、俺にとって知りたくない事まで知ってしまいそうな…。

そんな胸騒ぎ。

「じゃあ、キミは抜きでもいいよ。ハナと俺とでキミの彼女に逢って話を訊く。それじゃ駄目か?」

「分かりました…。彼女に訊いてみます」

「あ、そん時は俺が心の中を感じたり、霊が見えたりする人だって言わないでおいてくれる?」

「何でです?」

「余計な先入観を与えて、警戒されたら訊きたい事も訊けないじゃん?」

まぁ、それもそうかと俺は素直に納得する。

「ハナさん。彼女の事、苛めないでくださいよ?」

俺は冗談半分にそう言うと、ハナさんからチョップを脳天に喰らった。

毒舌だけではなく、手も早いんだ。

この人。

「それで、俺の中の霊達をどうする?キミは成仏させたいのか?」

「ええ。出来れば…。出来ますか?」

鈴木のせいで、そんな事になってしまったのだから、彼女達は悪くない。

”消滅”なんて酷い事は、出来ればなって欲しくない。

「分かった」

所長は短く一言、そう言うと自分の口に指を突っ込んだ。

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