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第11章 交霊

「おぇっ!」

急に嘔吐く所長。

なっ!?

何やってんだ、この人…。

「さっき飲み込んだから、吐き出してんの」

ハナさんは腕を組みながら、そう言った。

「えっ?ハナさんも心が読めるんすか?」

「読めないよ。アンタ、顔に出易いから直ぐに分かる。それだけの事!」

ハナさんは所長から目を反らさずにそう言った。

俺は、所長と姉弟のハナさんなら、出来るのかと思って焦ったが、ハナさん曰く『自分とハルでは次元が違う』と言って首を竦めた。

そう言えば、ハナさんも俺と同じで全く0感(霊を感じる能力が全くない=ゼロ)なんだっけ。

「うげぇ~…。こほっ!こほっ!」

ハナさんと話している内に、所長は咳き込んだあと、ケロッと普段の所長に戻った。

「吐き出した。今、キミ達の目の前に居るよ?」

「えっ!?」

所長に言われて、俺は辺りをキョロキョロと見回したが、それらしき物は何も見えない。

「キミ、本当に霊感ないね~」

そう言って所長が苦笑する。

「三人共、消滅を免れたからってキミに感謝してるよ。『有難う』って手を握ってる」

「マジっすか?」

「ああ。何なら体験させてやる」

そう言うと所長は俺に近付き、俺の手を取った。

途端に所長が触れていない側の手に感じる冷たくて柔らかい手の感触が伝わって来る。

思わず背筋にゾクゾクとした悪寒の様な物が走った。

その手は、俺の手を握りブンブン振り回していた様で、俺の手が勝手に上下に振れる。

「おわっ!?」

俺は吃驚して、変な声を上げてしまった。

冷たい手の感触が手から離れると、耳元で女性の『有難う』という声が聞こえた。

「挨拶は済んだな?それじゃあ、あの世に送ってやる。次に生まれ変わる時が来たら、今度は幸せな人生を送れ」

所長は、誰もいない空間に向かってそう言った。

きっと彼女達がそこに居るのだろう。

「キミも何か一言、声を掛けてやれよ」

そう言われて、俺は彼女達にこう言った。

「ゴメンね?所長が言う様に、俺も貴女達が来世で幸せになる事を祈ってるよ!」

俺がそう言うと、一瞬、彼女達が微笑んだ様な気がした。

所長は印を結びながら、俺には理解出来ない言葉を唱え、最後に優しく微笑んで誰も居ない空間に手を翳した。

そして手を下ろすとポツリとこう言った。

「………逝ったよ」

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