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第15章 告白

スマートフォンを手繰り寄せる為に手を離した途端、力なく布団の上に倒れ込んでいた恋奈は、俺が電話をしながら彼女に視線を移すと、ブツブツと口の中で何かを言いながらナマケモノくらい緩やかな動きで俺に手を伸ばしていた。

相変わらず瞳は宙に向けられていて。

それが、恋奈の心はここにはない様に見えて。

俺の背中にゾクゾクと悪寒が走った。

『そうか……。やっぱりな……』

電話の向こうで所長がボソッと呟く。「やっぱり」って、所長はこの事を予期していた? だから連絡をくれたのか?

『彼女の様子を詳しく話してくれる?』

所長にそう言われて、俺は恋奈が「赤ちゃんを作ろう」とか「赤ちゃんを喰らう」とか、おかしな事を言い始めた事、今の恋奈の様子を手短に話した。

俺が所長と話している間も、恋奈はブツブツ言いながら、俺の下半身に手を伸ばしてくる。

俺は彼女からは目を離さずに少しずつ距離を置いて、所長の指示を待った。

『キミ、ハナのお守りを持って帰ったよな?』

「ええ、はい。そう言えば借りっぱなしでした」

『そうか。いや、持って帰ってくれて良かったよ。その中に「清めの塩」が入ってる。それを彼女に飲ませろ』

「ええ⁉ 塩分過多になりませんか?」

『そんな事を言ってる場合か? それと、日本酒はあるか?』

「無いですよ、そんなの。俺、どちらかと言えばビール党ですし……」

『仕方が無いな。日本酒は俺が持っていく。暴れても水は飲ませるな。効力が弱まる。取り敢えず、俺がそちらに着くまでそれで凌げ。多分、20分後には着けると思うから……』

「分かりました!」

俺は電話を切ると、手繰り寄せた服のポケットからお守りを取り出した。

このお守り袋ってハナさんが作ったのかな?

白い犬のアップリケが付いてるんだけど……。眉毛が付いてるし、ちょっと歪んでいて変な顔だ。

(あの人不器用そうだもんなぁ……)

誤って指に針を刺してしまうハナさんが直ぐに思い浮かんで、ちょっとだけ笑えた。

笑ってみると、少しだけ余裕が持てたみたいで。

俺はお守り袋の中から白い包みを取り出すと、それを開いて中身を確認する。

それは所長が言った通り、塩だった。

俺は、俺に手を伸ばす恋奈の腕を掴むと、自分の方へ引き寄せる。

そして、顎を掴み口を開けさせると、「清めの塩」を口の中に押し込んだ。

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