
いつまでもここに居て
第9章 僕と君の幸福論[21]
「外に行かないとわからないことがたくさんある。…僕はこの2週間でそれが分かった。
だから外に行きたい。
確かに前は一生家の中で絵を描いていたいと思ってた。
その時期に描いたのが君だ。
…けど、君に気付かされたんだ。
すべて揃ったこの家が幸せじゃないって事も。
確か君は僕にこう言ったね。
『俺は君を具現化したものだ』と。
確かにそうだね。
容姿は全く違うけど、まるで昔の自分を見ているようだよ。
…君は絵の中でのんびり歩いて、元気に歩く人、必死に交渉するサラリーマン、美味しそうなたい焼きの匂いや猫の鳴き声。そういうのを感じたことはある?
僕はそういう【当たり前】が見たいから外に行く。
疲れた、とか眠いな、とか。
空が綺麗だな、喉が渇いた…外の世界は君が思ってるよりも広い。
外に行けばまた君の望む事も可能になる。
だから次はこんな事にならないよう君と外に行きたい。
そうしたら君もわかるよ【幸せになる】ってことをね。」
「…」
「外な世界は悪い事もだけじゃない。それを僕が証明してあげる。」
ぐい、と手を引いて、椅子に座らせる。
「待ってね…飛び切りかっこよく出かけよう。君みたいにカッコよければなんでもにあうよ。」
