いつまでもここに居て
第14章 ※サングリアの深海魚[54]
「でも、暗闇と言ってもやっぱり真っ暗に出来ないから赤色の光を充てるみたいだね。」
「うん。真っ暗にしたら見えないもんね。」
「なんかサングリアみたいだよね」
「サングリア?」
「うん。赤ワインに果物を漬けたものなんだけど、それに似てるなあって」
「もし…赤ワインがこの水槽の水として、深海魚がその果物ってこと?深海魚は甘くないよね?あれ?食べたこと無いからわかんない…」
「いやいや。例えばって事。家帰ったら作ってあげるよ」
「ほんと?嬉しい…」
「深海魚かあ…今度リーダーに言ったら食べさせてくれるかな?」
「げっ、俺見るのはいいけど食うのは嫌だなあ…」
その時チリーン。と背後から鈴の音が聞こえた。
「あれ、?今鈴の音…」
「なにそれ?聞こえなかったけど…」
空耳かな、と首をかしげると、ニノが楽しそうに笑いながら手を引っ張り、深海魚のエリアを離れると、一番大きな水槽に向かってゆっくりと歩き出した。