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いつまでもここに居て

第5章 ひまわりの約束[21]




次の日。僕は智くんのカルテを見た。

驚いた。母親も父親も死んでいた。
沢山のお金だけを残して。
理由は簡単。父親が世界大戦に巻き込まれてた。
1人で智くんを育てていた母親は病気から2年と少し経過していた智くんを育てられなくなってノイローゼによって自殺。

それから1ヶ月後。
警察に通報されて、病からの熱で唸っている智くんと、隣にぶら下がった母親が発見された。
4歳の時から発症した病から、それ以降外に出ることは無かった智くん。
三年ぶりに出た外はもう熱に浮かされていて理解していないだろう。

更に悲劇は続き、熱によって脳がやられ、少しの記憶障害。そして一番大きかったのは目。
見えないものまで見えてしまう目になっていた。

最初は動物。
7歳で話すこともままならず、病院の中にある学校に通う。その時に動物の絵を書くことになったのだが、智くんは1度も見た事もないような像や虎をかき始めたのだ。

最初は誰もが疑った。
昔に動物園にでも言ったんだろう。と。

だが、話を聞く度に貧乏で動物園なんてままならず食にもたまに困ることがあったという事実が分かっていき、それに伴いその智くんを不気味がる人が増えた。
だから友達が居なかった。

貧しい家庭だったが母親は持っているものを全て売り払っていた。
どうやったのかはわからないがその額は半端ではなく、7歳から11歳の六年の間でお金に困った事は無かった。

この4年で沢山の人が入院し、退院した。
智くんは…最初一年。絶え間なく過ぎ去っていく患者たちの中で唯一変わらずそこにある夏の向日葵が友達だったようだ。

切り倒された時はショックを起こした。
誰もが変わりゆく中、唯一変わらない向日葵。
智くんも同じだった。唯一の【友達】。
その後ショックにより向日葵が切り倒された記憶を無くし、向日葵がまだ咲いていると言い出したのだ。

だんだん看護師さんに否定的な事を言われる事が嫌になったようで、向日葵の事は一切話さなくなったのだが、スケッチブックには沢山の向日葵で埋め尽くされていた。

病気は治ることはない。病弱だから部屋を歩き回るならともかく、病院から一歩出れば終わりだそうだ。

これが智くんのカルテ。
4年もいる患者だからなのか細々と記されていた。

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