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いつまでもここに居て

第5章 ひまわりの約束[21]



その後
必死に鉛筆とノートを掴んでいる智くんに手提げの布の鞄と近くに売っていた麦わら帽子をかぶせた。
そして僕達はとある所へ向かった。

「向日葵をまだ見れるところはありませんか?」

そう聞いて教えて貰った向日葵畑。
ここら辺には農家があまり少ない為にあまり手入れがされていないようだった。
向日葵は強い花だ。どんなところでも種を撒けば咲く。こんな荒地でも向日葵は太陽を求めて咲くのだ。


「えんぴつとノートを買ってもらいました。先生はなんでも買ってくれます。おかしもたべました。しべりあっておかしです。」
智くんは
隣で楽しそうにノートの最初のページに日記を書いている。
「智くん楽しい?」
「うん、すごく楽しいよ。ありがとう先生。嬉しい。とても嬉しいよ。」
「良かった。」
髪をなでると嬉しそうにしながら、日記を書き始めた。

「後ね。これ。何かあったらこれを持っていれば大丈夫だから。カバンに入れておくんだよ。」
僕が病院に帰らなくてはいけなくなった時の為に智くんに子供が持つような事の無い大金を握らせた。
多分智くんはこれがどんなにすごいかわかってないだろう。
「うん。ありがとう。けど、ちゃんと先生と病院帰るよ。大丈夫。」
「えらいな。偉いぞ。ちゃんと治そうな。確かに死ぬかもしれない。けどな、希望を持とう。生き延びた時の為に俺も智くんも頑張らなきゃ。な。」

「うん。希望…か。希望っていい言葉だね。俺さ、もう外なんて見れないと思ってた。
…けど、こうやって先生と外に出て、間近でこんな真っ黄色に咲いてる向日葵を見れた。希望を持つって大事なんだね。ありがとう先生。…なんで泣くのさ。嬉しくて泣きたいのはこっちだよ。先生は泣き虫だなあ…」
ボロボロ涙を流す俺を見て、また笑ってくれた。

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