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いつまでもここに居て

第5章 ひまわりの約束[21]





次の日。
俺は倒れてしまった。ほぼ睡眠を取ることもなく智くんに付きっきりだったから。
なにか声が聞こえるがもう遠い意識の中だ。
智くん。
どうしてるの…。

夜まで泥のように眠った。
はっ、としてバタバタと智くんを見に行った。
やっと着くと智くんは更に悪化していた。
もう息も掠れていた。

「智くん…!」
「あ…せんせ…」
「智…!!」
「今日…いい夢を見たんです…俺に沢山の家族と友達がいて、先生とでスターになってて…。俺が皆に優しく出来るから、俺は尊敬されてて…絵も沢山描いて、色んな人がそれを見てくれているんだ…」
「やめろ…これ以上話すな…」
「先生…最後に俺に教えてくれませんか…」
「やだ…智…」
涙を流す僕に優しく微笑んだ。
これが最後だ。とそう感じた。

「じゃ、最後に3つ智くんに教えてあげよう…
まず、一つ目は優しくなる方法だ。人に優しくなれるのは涙を流すことだけじゃない。人に優しくなる涙以外にも辛い涙、悔しい涙。沢山ある。
そんな涙を泣かないで優しく見守るのも優しくするって事だ。だから、智くんだって優しい。涙を流さないことも優しくするって事だ。智くんは涙を流さないで優しくなれる…暖かい人なんだよ。だから皆が元気になるんだ。だから、【次】は涙を流せる優しい人になって欲しい。そして僕は泣かないで優しくなれる人になるから。
そして、二つ目。キスはね、家族とか友達とか…そういうのじゃなくて、多分智くんが思ってるよりも大切なものなんだ。
もう離れたくない。って心の底から相手が好きって時にするんだよ。恋愛っていうんだけどね、智くんには難しいかな。
でもこれから分かるよ。それが当たり前になる世界がくる。

そして三つ目。
智くん、僕は…」


見ると、智くんはとても幸せな顔をしていた。
一筋の涙を流して。
僕は智くんの近くにあった鞄から1輪の向日葵を取り出し智くんに握らせた。それは日光を探すように真っ直ぐ咲いていた。

向日葵のような 真っ直ぐなその優しさや温もりを僕も 届けたかった。
君と居れたこの幸せに僕はやっと気づいたから。
尊敬の意味。そして、愛してると言う意味を込めて向日葵を。そこにあった向日葵で申しわけないけど、【次】は綺麗な花をプレゼントするから。
そして、唇にキスをした。
教えられなかった最期の三つ目。
それはいつかちゃんと教えてあげよう。

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