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いつまでもここに居て

第6章 ※上限の月[34]



「はあ…」
隣の部屋で溜息を着くと、後ろから
「和也が我侭で大変でしょう?」
とばあやが声を掛けてきた。
「え…いやいや。あいつなんか俺にだけ文句ばっかで…なんか嫌われてんのかな…」
へらへらと笑う俺を暖かい目で見てくれていた。

「ああやって我侭になったのは初めてかもしれないわ、」
「え?…というと?」
「あの子はね、親2人が共働きでなかなか帰ってこないの。だから、我侭なんて言える機会もなかったから。私にはちょーっと我侭は言ってくれましたけど、だんだん言いづらくなったんでしょうね。使用人は付きますけど、仕事内容だけをこなすだけの方が多くて、和也は更に心苦しい思いをしたんでしょうね」
「…」
「だから、貴方みたいな元気な方が来て嬉しかったんでしょう。やっと我侭を言える。って思ったんじゃないかしら…ご迷惑だと思うから、もし大変になったらすぐやめてくださって構わないわ。」
「いえ…そういう訳だったんですね。なんかすげー嬉しいです。俺も使用人の癖に弟持った気分になっちゃって…」
「それでいいのよ。むしろ嬉しいわ。もし良かったら…」

使用人三ヶ月を経ったある日ばあやに一つの提案をされた。

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