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いつまでもここに居て

第6章 ※上限の月[34]



□二宮part□

その夜。今夜も月が綺麗な日。
今日も見えなかったものが見える日。
俺にとってこんな素敵なことは無い。

最近好きなのは雅紀が教えてくれた本を読むこと。
なのだが、読めない。目が見え始めたのは最近で、平仮名や漢字なんて耳では聞こえても見た事なんてなかった。
けど、雅紀が教えてくれたことを頼りに必死で読み解く。
「メアリーは1人で散歩に出かけました。メアリーは見たいものがあったのです。それは…ん、これ読めないな…雅紀なんて言ってたっけ?」
朗読していくとわからない文字が出てくる。
しかし、朝聞こうとしてももう目は見えていなくて、どのページかを必死で頭に入れなきゃいれないのが面倒になってきた。
ここで雅紀が居てくれたら直ぐに聞けるのに。

「はあ…」
そういえば、俺は雅紀の顔も見たことがない。
俺は知らないことばっかりだ。
色んなものを見たいよ。雅紀の顔を見たい。
雅紀は今寝てるのかな、雅紀はどんな顔で笑うのかな。
ばっちゃとした約束よりも好奇心の方が上で。

そろりとベットから降りると隣の部屋に向かった。

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