俺氏、捨て子を拾いました
第6章 金がない。
「大丈夫だよ、最初は皿洗いぐらいにしておいてあげるから」
絶妙な優しさ。そんな優しさいらないから帰らしてください切実に。
俺は霙ちゃんのお尻について行くと、無駄にだだっ広い洗い場にたどり着いた。
なにここ。簡易のバスタブか何か? 一緒にお風呂入るの? おっけぇ……おっきしたぜぇ……
「で、ここの目の前の棚があるだろ?」
視線の方向を見ると確かに銀色のステンレスかなんかよくわからんが三段に分かれた横に広い棚がある。
そこに食器のようなものが、いくつか置かれている。
「あ、はい。棚があります」
「まあ多分、分かると思うけど、お客様から下げた食器をここの棚に入れていくからあんたは随時その食器を洗っていってほしいの」
「ぼくに……できるでしょうか……?」
「できるできないじゃない。やるんだよ」
お姉さん、目が怖いです。ぼくおしっこもらしちゃうぉ。そーだーおしっこで食器を洗うじょーwwwwwwww
「あんたに足りないのはそれだけだ……ちょっと店内見回ってくるから、そこの棚にある分だけ洗っといてくれ」
霙ちゃんはそれだけ言うと、どこかに消えていった。
残された俺と汚れた食器。
なんか親近感……湧いちまうよな……頑固な汚れなんて俺そっくりだぜ……いや、むしろそこしか似てないけど。
お前らは磨けば輝くんだよなぁ……あれ、待てよ。じゃあ俺も磨けば輝くってことだよなぁ?
俺は置いてあったスポンジを手に取り、汚れてる一枚の皿を洗ってみる。
汚れが落ちていく様子を見ていると俺の心の汚れも同時に落ちているようで……
俺……もしかして……改心できるのか……?
そう思いながらスポンジで汚れを取り終えた皿を持ち上げようとした時であった。
「あ……」
するりと俺の手のひらからこぼれ落ちる純白の円皿。彼は争いもせずにただ悟ったように流れに身を任せるようにただゆっくりと下に落ちていった。
パリーン!!!!
彼は美しかったフォルムを失い無残な姿となって俺の前で儚く散っていった。
「あ、あいぼぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺。皿を割りました。