DAYS
第40章 ホント ノ ホント M×N
潤くんは今、メイクに行ってる。
いつ帰ってくるかは分からない。
だからこんな所で泣いてる場合じゃない
ってのは分かってる。
それでも、どうしても翔さんの暖かさが
染みて涙が止まらない。
このままここにいても
涙は止まりそうにないから
「トイレ行ってくるね、俺。」
「ん、いってらっしゃーい。」
翔さんの緩い言葉に押されて楽屋を出る。
幸い廊下には人がいないから、
この情けない顔を見られる事はなさそうで
ホッとした。
トイレの洗面所の冷たい水で、
バシャッと顔を洗う。
その冷たさに思わず少し飛び上がった。
いくら泣いて顔が火照ってるとはいっても、
真冬だ。
泣いてから時間は経ってないから
腫れることはないと思うけど、でもまだ
涙は止まらない。
「潤くん…。」
滴り落ちる水が、涙と重なって流れてく。
ポツリと零れた潤くんの名前もまた、
静かなトイレに響いて消える。
止めないとって思うほど止まらないもので、
水で流せば流すほど止めどなく出てくる。
今までの我慢が溢れてきて、止められない。
ふと、こちらに向かってくる足音が
聞こえて、ファサッと何かを投げられる。
翔さんだった。
「タオル、持ってってなかったから。」
「…ありがとうございます。」
何でもお見通しなんだな。
ここで顔を洗おうとしてたことも、
涙が止まらないってことも。
「それと、いい案がある。」
「いい、案?」
「そう。
飛びっきりのいい案が見つかった。」
ニヤッと笑った翔さんに、少しだけ
嫌な予感がした。