DAYS
第7章 crazy for you M×N
N side
「美味しい。」
「そう言って頂けると、私どもも
幸せです。」
「やっぱり、海が近いから新鮮ですね。」
「はい。今朝採れたものを使ってますので。」
潤くんと女将さんとの会話なんて
頭に入ってこない。
きっと美味しいんだろう料理の味も
よく分かんない。
何より、俺の頭にあるのは
…何であんなこと言っちゃったんだろ。
「……シテ。」
っていった上に、嬉しい。って…。
どうしよ、今日俺やばい。
「美味しいね、和。」
「へっ!?あ、うん。」
「どうした?」
声が裏返って変な声出ちゃった。
「いや、大丈夫。すごく美味しいね。」
お造りに手を伸ばして、口に運ぶけど
それどころじゃないんだってば。
シラフじゃ辛いと思って、
ビールを飲むんだけど酔えない。
今日に限って全く酔えない。
しかも、
「和。そんなに飲んじゃ、せっかくの
料理がお腹に入らないじゃん。」
そう言われて、お酒も飲めないし。
酔えないし。
悶々としてるうちに、
食事はもう終わってて。
仲居さんたちが、片付けをしてくれてる。
「とても美味しかったです。」
「ありがとうございます。
寝室のほうに、布団のほうを引かせて
頂きましたので。」
「あ、ありがとうございます。」
「それでは、ごゆっくりどうぞ。」
ばたんと音がして、扉が閉まる。
とうとう二人っきりの部屋。
「布団、引いてくれたって。」
「う…うん。」
おいで。って手を差し出される。
おずおずと手をとると、
「行きましょうか、姫。」
一発ウィンクをかまされて、熱くなる。
「姫じゃない。」
「はいはい。」
あっという間に寝室に着く。
寝室は畳で、部屋の灯りは優しくて
それでいてどこか妖しい雰囲気があって。
「和、おいで。」
布団の上に足を伸ばして座って、
俺に手を伸ばしてる潤くん。
心臓が持たないから…。
潤くんまで、一歩の距離。
だけど、その一歩が踏み出せなくて。
俺に残った羞恥心が邪魔してくる。
「しょうがないなぁ。」
って、潤くんが立ち上がって
俺に近づいてきたときに、
潤くんの携帯に着信。