DAYS
第8章 一番 S×A
あ、やっちゃったな、って。
そう思った時にはもう遅かった。
「そうだな。本物よりもテレビの中の
櫻井翔がいいんだもんな。」
その言葉にはっとした。
翔ちゃん、って名前を呼んでも
俺の方を見向きもしてくれないまま、
すたすたとリビングを出ていってしまった。
バタンって、いつもよりも大きな
扉を閉めた音が、翔ちゃんの苛立ちを
表してるみたいでびくっとする。
…翔ちゃん、怒らせちゃった。
「翔ちゃん…。」
今呼んでも、遅い。
返事なんて返ってこない。
鼻の奥がつんとして、視界がぼやけてくる。
『世界一…相葉雅紀!』
翔ちゃんがいないリビングで、
画面の中から翔ちゃんの声が聞こえる。
大好きなその場面も、今は虚しく
なる材料で。
テレビは盛り上がってるのに、
俺の気持ちは全然上がらない。
ガタガタって浴室のほうで音がした。
「翔ちゃん、お風呂か…。」
翔ちゃんの好きなぬるめのお湯、
ちゃんと張っておいた。
お風呂に浸かる時、翔ちゃんは長湯を
するから、しばらくは一人か…。
部屋の真ん中で、蹲る。
翔ちゃんがお風呂から上がってきた時、
もし俺が何もしなかったら…。
離ればなれになっちゃうの?
ここから出ていっちゃうの?
…もう、ぎゅってしてくれないの?
マイナスな考えばかりが浮かんでくる。
「こんなんじゃダメだよ。」
明るくて、世界一だろ!相葉雅紀!
両手で頬を、ぱしっと叩くと、
「泣かない。」
働かない頭をフルに動かして、
必死に考えた。
「これ、大丈夫かな…?」
途端に不安になってきた。
色々考えたけど、いい案が出なくて。
考え抜いた挙句、これになった。
…というか、これしか思いつかなかった。
「余計怒られちゃいそう…。
俺の馬鹿ぁ…。」
こんなことしか思いつかない自分が
悲しくなった。
寝室の端っこで、体育座りをして
ぼろぼろ泣いてたら、
かちゃってドアが開いて、翔ちゃんが
入ってきた。
大丈夫?って心配する言葉をかけてくれた
次の瞬間、固まってる。
そりゃこんな格好してるし?
でも。翔ちゃんの顔。めっちゃにやけてるし。