DAYS
第8章 一番 S×A
S side
お風呂から上がってリビングに行くと、
やっぱり雅紀の姿が見えない。
「寝室か。」
ケンカした時。
落ち込んでる時。
どちらかの機嫌が悪い時。
雅紀は決まって同じ場所にいる。
寝室のベッドと壁の隙間。
その小さい隙間にすぽっと体を滑り込ませて
体育座りをしてる。
「雅紀?」
名前を呼びながら寝室の扉を開けるけど、
「あれ、いない?」
いつもなら絶対にいるのに。
「雅紀ー?」
居ないのか、と思って部屋を出ようとした時
ごそごそって物音がした。
その音はクローゼットの中からで。
「雅紀?」
クローゼットに近づいて、ゆっくりと
開けてみれば
「え!?雅紀!?」
真っ赤な顔をした、
ナース服を着た雅紀がそこに立ってた。
「翔ちゃ、ごめんっね?」
ぼろぼろと涙を流しながら、
必死に謝ってる雅紀。
「雅紀?」
いや、ぜんっぜん頭に入ってこないんだけど。
格好に目がいっちゃって。
薄いピンクのミニスカートのナース服。
頭にはちゃんと帽子までつけてるし。
パンストまでちゃんと履いてる。
「それ、どうしたの?」
「どうしたら、許しって、くれるか
分かんなくて。…っ。それで。」
「コスプレしたの?」
こくこくと頷いてる雅紀。
今まで、雅紀がそれを着るなんて
絶対に無くて。
昔、テレビ番組で、雅紀がナース服を
着てたのを思い出して、
「もう一回見たいなぁ。」
なんて酔った勢いで買ったそれ。
ずっと、着てみて。って言ってたんだけど
「やだ。恥ずかしいんだよ?それ着るの。」
って、一度も出番の無かったそれ。
まさか今日お披露目になるなんて…。
確かに似合ってる。物凄い。
雅紀の綺麗な足がすらっと伸びてて似合う。
怒ってると思ってコスプレまでしちゃう
どこまでも純粋な雅紀。だけど、
「俺、怒ってないよ?」
「…本当に?」
涙をいっぱいに溜めた瞳が、
上目遣いにこっちを見てる。
その目を見たら、嘘なんてつけなくて
「ヤキモチ妬いてただけで…。」
「ヤキモチ?」
首を傾げて聞き返してくる。
その格好でそれは、破壊力がやばいから。