
DAYS
第10章 ためらいは捨てて S×N
だってこうすればね。
「和也。」
とびっきり甘い声で、俺の名前を
呼んでくれるんだもん。
とびっきり甘い翔になるんだもん。
「…。」
「かーずーなーり。」
「…。」
「かず…。」
ちょっと泣きそうになってる
翔の声が耳に飛び込んでくる。
自分でもずるいな、って思う。
だけど、もっと色んな翔が見たいじゃん?
スーツでばっちり決めてる翔も好き。
だけど、それ以上に
今こうやって目の前にいるみたいな
弱さのある翔が好き。
自分にしか見せないようなところがある
翔が堪らなく愛おしいから。
クッションから少しだけ顔を出して、
翔の様子を伺おうとすると
「和也。」
「ぅわっ!」
ずっとこっちを見てたみたいで、
翔の顔がドアップで見えた。
まさかいるとは思わなくて。
慌ててクッションで顔を隠そうとするけど、
「ダメ。没収。」
「あっ…。」
右手で強くクッションを掴んだ、
かと思うと、リビングの端までぽーんと
投げつけてしまった。
「俺のこと、嫌いなの?」
「そんな訳ないでしょ。」
翔の目を見て言い切ると、
お酒のせいか、その言葉のせいか、
顔が紅くなってる。
翔って、お酒飲むとキャラ変わるな。
そんなギャップにも胸きゅんしてる。
俺は女子か。
「和也ー。」
こーこ。って、足を広げてその間を
ぽんぽんと手で叩いてる。
そろそろと、まだ情事の気だるさが
残ってる体を動かして、翔の足の間に
体を滑り込ます。
後ろから、ぎゅって抱きしめてくれる
腕の強さ。
体の温もり。
「翔。」
「和也。」
外は風がびゅんびゅん吹いてる。
この部屋だって、暖房もついていない。
特別厚着をしてるわけでもない。
だけどね、こんなに暖かくて。
体も暖かいけど、それだけじゃない。
なんだかね、心までぽかぽかしてくる
みたいな気持ちになる。
「和也。」
俺の名前を呼んでは、
頬や、首筋、耳にキスを落とす翔。
会えなかった分の寂しさや心の乾きが、
全部消えていく。潤っていく。
俺の全部が、翔で埋まってく。
久しぶりの休みは、
甘くて、温かくて、優しかった。
