
DAYS
第10章 ためらいは捨てて S×N
N side
「和也。起きて。和也。」
「んぅ…?」
俺を呼ぶ翔の声と、優しく肩を揺さぶられる
感覚で目を覚ました。
助手席のドアが開いていて、
冷たい空気が入ってきていて、思わず
「さむっ。」
と声を漏らせば、
「あ、上着かいるな。」
って、いそいそと、後部座席の方から
薄めのコートを出してきてる。
…そこまで女性用にしなくても。
「はい、これ着て。行くよ。」
「え?いや、行くってどこにー」
「とりあえず下りて。」
強引に俺の手を引いていく翔。
慌ててコートに袖を通しながら、
車から下りると、
「え、ここって…。」
「そ。ディズニーランドだよ。」
俺も帽子とマフラーでもしないと、って
いそいそと長いマフラーを巻いてる。
泣きそうなんだけど、今。
だって、こんなの嬉し過ぎるでしょ?
優しすぎるでしょ?
サプライズすぎるでしょ?
『ディズニーランドでデートしたい』
ずっと行きたいとは思ってたけど、
無理だっていうのは痛いほど分かってた。
だから、翔を困らせるためだけに、
あんな嘘をついたのに。
それでも翔は、何てことないような顔して
こんな凄いことを、さらってやっちゃう。
「ほら、早く行こっか。」
いつもより深めに帽子を被って、
暖かそうなマフラーをつけた翔が、
優しく笑って手を差し出してくれてる。
掴んだ手のひらは、いつもよりも暖かくて。
ちょっぴり泣きそうになった。
「バレないかな?」
「大丈夫だよ。絶対誰も和也って分かんない。」
「いや、俺は大丈夫かもしれないけど、
翔は?」
「…大丈夫でしょ(笑)
もうそんな事考えるのは止めよ。
ここ、夢の国だから。」
いつになく翔の滅茶苦茶理論。
でもそれも愛おしくて。
繋いでる手をぎゅっと握ったら、
ちょっとびっくりした顔をしたけど
すぐに笑って握り返してくれた。
「ねぇ、これ一緒につけよう。」
「え?これ?」
パークの中のショップ。
二人でおそろいで、ミッキーとミニーの
耳がついてるのを頭につけた。
「なんかバカップルじゃん。」
こんな時間が、堪らなく好き。
