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DAYS

第12章 Happy Birthday♡♡



A side



「…雨だね。」
「…うん。」


木曜日の朝。
昨日よりも少し冷えた朝。


窓の外は、どしゃ降りの雨。

窓に打ち付ける音が、
2人だけの空間によく響く。


その音は、何だか妙に切なくて。


雨は好きだよ。
今日じゃなければ、好きだった。



「…雨だね。」
「…うん。

って、何回同じこと言うの(笑)」


俺の腕の中にすっぽりと収まって、
ははっと笑ってる智。



「だって…。」
「しょうがないよ。雨だもん。」


だって、てるてる坊主まで
ちゃんと作ったんだよ?

しかも、4つもだよ!?


なのに、雨なんだもん。



「また今度、行けばいいよ。」
「…うん。」


何で俺よりへこんでるのって
また笑われた。



今日、本当は智と2人で
船を借りて釣りをしに行く予定だった。

誰にも邪魔されない船の上で、
智の誕生日を2人だけで祝う予定だった。


そこで、のんびりして
あわよくばラブラブちゅっちゅ…。



「雅紀。今、変なこと考えてた
でしょ。」
「え!?」


思わず声が裏返ちゃった。


「何で分かったのー」
「やっぱり考えてたんだ。」


しまった、やられた。


してやったって顔して、笑ってる智。



「雅紀って、分かりやすいよね。」


するっと俺の腕から抜け出して、
智がキッチンに向かう。


「よく言われるよ。」
「だろうね。」


俺も、智のあとを追いかけて
キッチンへと足を動かす。


「何してるの?」
「んー?
コーヒー飲みたいかなぁって。」


ニコニコしながら、お湯を沸かしてる。


「分かったの?」
「ううん。俺が飲みたかっただけ。」
「なんだそれ(笑)」


お湯を注げば、たちまち部屋中に
香ってくるコーヒーの匂い。



「はい。」
「ありがと。」


マグカップを2つ持って、
リビングのほうに戻ってくる。


俺が1個持つよ、って言っても


「いいの。
こうやってね、2つ持ってるのって
幸せなんだ。だって、一緒にいるって
ことでしょ?」



そうやって、ふにゃって笑った智は
何よりも可愛くて、少し儚かった。

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