
DAYS
第13章 愛のままに わがままに N×M
N side
最悪だ。
最低だ。
終わった。嫌われた。
皆からも。
…潤からも。
潤の手を振り払った左手が
氷みたいに冷たいのは、
冬のせいなんかじゃない。
もう何も考えたくなくて、
急いで車に乗り込んで家へと向かう。
時間は11時を回ってて。
こんな時間だって言うのに、
車は込み合ってる。
テールランプを光らせた車が、
俺より前に何台も見える。
クラクションの音が、
寂しいビルの森の中に響いてる。
ごちゃごちゃした街は、
いつになく焦っているようで。
それが、何だか自分の心と重なった。
「はぁ。どうすんだよ…。」
家に着いても、
頭の中は潤のことでいっぱいだった。
心のどこかで期待してたんだ。
もしかしたら、
追いかけてきてくれるんじゃないか。
俺の手を、もう1度引っ張って
くれるんじゃないか、って。
「あんな酷いこと言ったんだもんな…。」
どれほど傷つけたかなんて、
見当もつかない。
驚いたような、それでいて寂しそうな
潤の顔。
振り払われた右手と、俺の顔を交互に
見て、泣きそうな顔をしてた。
そんな潤を見ていられなくて。
『ごめん。』
そのたった一言も言えずに、逃げた。
たった1人のリビング。
1人暮らしなんて、もう10数年も
してきてるのに。
今日ほど、寂しい部屋は初めてで。
俺は床に座り込んだ。
暖房もつけないで、
こたつにも入らないで。
椅子にも座らないで。
電気も付けないで。
「ごめん。ごめん、潤…。」
声に出すほど、切なくて、苦しくて。
嫉妬してたんだよ。
翔さんに。
今日だって…。
楽屋でのやり取りに嫉妬した。
髪の毛をくしゃくしゃしてる
翔さんに嫉妬した。
くしゃくしゃされて、嬉しそうな顔を
してる潤に、イライラした。
『俺は、松潤が好きだ。』
翔さんに言われた言葉が突き刺さる。
俺だって好きだよ。
誰よりも好きだよ。
何なんだよ。
お前に何が分かるんだよ。
どんな気持ちで潤と、翔さんの
やり取りを見てると思ってんだよ。
翔さん。
俺、『分かった。』なんて言えるほど
大人じゃない。
