DAYS
第2章 愛愛愛 S×A
S side
一通り、必要なものも買い揃えて
家へと帰る。
忘れ物はないと思うけど…。
そんな不安をちょっとだけ抱えて、
そっと玄関を開ける。
まだ寝てるかな?
一応、控えめに
「ただいまぁ。」
って言ってみるけど、
「やっぱり寝てるか…。」
後でちょっと様子見に行かなきゃ。
靴の紐に手をかけながら考える。
その時、
バタバタって近づいてくる音がして。
雅紀、起きてたんだ。
だいぶましになったのかな?
靴を脱いで、荷物を持ち、
リビングに向かおうとしてたとき、
ガチャってリビングのドアが開いて、
「あ、雅紀。目が覚めたの?大丈夫?」
って声をかけると、
突然ぎゅっと抱きしめられた。
「へ?へ?」
状況がうまくのみ込めなくて、
間の抜けた、変な声しか出てこない。
「…っ、ふっ。」
…泣いてる?
胸の辺りがじわぁっと
温かく濡れていく感じが分かる。
「…雅紀?」
「…かった。」
「寂しかった!」
顔をバッと上げて、涙で濡れた瞳を
こちらに向けながら、半ば叫ぶような声で
確かにそう言ったんだ。
ビー玉みたいな、潤んだ綺麗な瞳が
俺を捉えてて、何も言えなかった。
「寂しかったよぉ…っ、うっ。」
俯いてまた泣き出すから、
慌てて背中をさする。
なんでこんなに泣いてるんだろ。
寂しかったって言ってるけど、
本当は何か辛いことがあったんじゃ…
って不安になる。
「雅紀?何かあったの?
辛いことでもあった??」
顔を上げず、下を向いたまま、
首だけを横に動かしている。
「じゃあ体がまだ辛い?」
その問いかけにも首を横に振るだけで。
何を言ったらいいのか分からず、
重い沈黙の時間が流れた。
「ちょっと…。寂しくなっただけだよ。」
しばらくして、顔を上げて
雅紀はニッコリ微笑んで言った。
それ、ちゃんと笑えてるつもりなの?
…顔、引きつっちゃってるし。
「無理するなよ。」
少しでも俺の気持ちが伝わったら。
俺の気持ちに応えてくれたら。
言葉で言えない代わりに、
ひたすら強く、雅紀を抱きしめた。
「…好きなんだよ。」