テキストサイズ

DAYS

第2章 愛愛愛 S×A


A side

すごく小さい声で聞こえた、
俺が欲しい言葉。

追い詰められてるみたいに、
苦しそうに出た言葉。


「…好きなんだよ。」
って。確かにそう言った。


「雅紀、いつまでも玄関に突っ立ってないで
リビングのほうに行こっか。」

さっきの声とは打って変わって、
明るい声。



翔ちゃん、ごめんね。
俺、馬鹿だからさ、全然気付かなかったよ。

何度も聞いた、

「雅紀、好きだよ。」

って言葉。

「ありがと。」

って聞き流してた言葉。
まさか本気だとは思っていなかったから。

いや、違う。思いたくなかったんだ。
ずっと自分の気持ちから逃げてきてた。

自分の気持ちには、気づいてたくせに…。


苦しめてたんだね。
悲しませてたんだね。

「雅紀…?」

黙ったままの俺を心配したのか、
俯いたままの俺の目線に合わせて
しゃがみ込んで、顔を覗き込んでくる。

その真っ直ぐな目は、
いつも優しくて、温かくて。


ごめんね。…ちゃんと伝わったよ。
俺も、

俺も

「翔ちゃん、好きだよ。」
「…え?」
「好きだよ。」

恥ずかしいのなんてどうでもよかった。
ここで伝えなきゃ、またすれ違う。

顔を上げて、もう一度

「好きだよ。」

って。翔ちゃんの瞳をしっかりと見つめる。

翔ちゃんの瞳がだんだんと
潤んできて。

いっつも頼りがいがあって、
弱さなんて見せてくれる人じゃなくて。

そんなに追い詰めてたんだね。


「気づくの、遅くてごめんね。…俺、
ずっと翔ちゃんが好きだったんだ。」
「…っ、雅紀っ。」

ぎゅって、力強く抱きしめられる。

翔ちゃんの腕は、強くて。

…でもやっぱり優しくて。

「俺も…俺も好きだよ。」
「うん…うん。」
「俺と…付き合っー…。」
「翔ちゃん。」

翔ちゃんの言葉を遮る。
驚きを隠せないような翔ちゃん。

ずっとずっと待たせてごめん。
俺、ちゃんと言うから。

「翔ちゃん、俺、翔ちゃんの気持ちに
どこかで気づいてた。
でも…。ずっと逃げてた。
自分の気持ちに気付いてたのに…。
怖くて、ずっと逃げてたの。
ずるくてごめんね。…でも俺ー」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ