DAYS
第15章 SUPER LOVE SONG A×S
「ささ、入って入って。」
玄関で止まったままの俺を、
中へ入るように急かしてくる。
いや、だって初めて来たんだよ?
…彼氏の家に。
そりゃあ、緊張するよ。
…期待、してもいいのかな。
「翔ちゃん大丈夫?顔赤くない?」
「あ、あ!うん、大丈夫!」
「そう?ならよかった。」
だめだ、自分で言って照れるわ。
あんまり深く考えるのはやめよう、って
思うんだけど、俺にはそれが難しい。
言葉よりも先に、頭が働く。
言動よりも先に、頭が働く。
考えるな。感じろ。
この名言の難しさにぶち当たってる。
「部屋、超綺麗だね。」
「そー?こんなもんだよ。」
「俺の部屋、もっと悲惨なんだけど。」
「翔ちゃんは特例だよ。」
ケラケラ笑って、キッチンのほうに
消えていく。
「翔ちゃーん。その辺、適当に
座ってね。」
「あ、うん。」
「何飲むー?
って言っても、ビールしか無いけど。」
「何で聞いたんだよ。」
こんな何気ない会話が凄く好き。
付き合う前から、何度も積み重ねてきた
何気ない会話。
もちろんそれも好きだったけど、
今とは何か違う。
「好き」って気持ちが入っただけで、
こんなに変わるもんなんだな。
「じゃ、お疲れー。」
「かんぱーい。」
「何に乾杯してんの?」
「俺のあの仕事の巻きの速度。」
真剣な顔つきで言うから、
飲んでたビールを吹き出しそうになった。
「あ!今、笑おうとしたでしょ。」
「してないしてない。
…っふふ。ぷっ。」
「やっぱり笑ってるじゃーーん!」
全身で必死にアピールしてくる雅紀。
それが余計に面白くって、
腹が捩れそうになった。
「お腹空いてる?」
「あー、そういえば。」
「飲むだけじゃやっぱりよくないよね。
ちょっと待ってて。」
そう言い残すと、またキッチンに
消えていった。
しばらくすると、じゅーって音と
いい匂い。
「出来たよー。」
お皿に乗ってるのは山芋を焼いてるヤツ。
「これしか作れなくて。」
「いいよ、全然。俺はこれも作れない。」
今度は俺が爆笑される番だった。