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DAYS

第21章 愛を込めて花束を S×N






仕事は、何とか営業スマイルで
流すことが出来た…はずで。



仕事を終えて、マネージャーの車に
乗り込む。



「病院に。急いで。」
「はい。」


朝見た、苦しそうな顔が
ずっと忘れられない。



ずっと一緒に住んでるのに、

気が付かなかった。


夜、一緒にお風呂に入ったのに。

朝、隣で一緒に寝てたのに。


誰よりも近くにいたのに、気が付かなかった。



「ごめんな…。」


静かな車の中で、
ぽつりと零した声はよく響いたけど、
マネージャーは何も言わない。



あの時、ちゃんと聞くべきだったのかな。

格好つけて、聞かなかったのが
まずかったのかな。



ぎゅっと抱きしめた距離は
あんなに近かったのに、

どこか俺たちの距離は遠かった。




焦る気持ちは届かなくて、
車の波はなかなか動かない。


「こんな時に限って…。」



いつもそうだ。


俺は、大事な時に何かが足りない。







病院に着いたのは、
スタジオを出てから1時間半後だった。


「二宮さん、ここです。」
「ありがとう。」
「俺、ここで待ってますから。」


マネージャーは気を利かせて
外で待っててくれてる。



「和、入るよ。」


やっぱり返事は返ってこない。


ベッドの上で、眠ってる和。

細く白い腕には、点滴が繋がってて。



時々、苦しそうに

「んっ…ゃ…。」


魘されてるような声を出してる。



ちょっとでも安心してほしくて、
手をぎゅっときつく握った。

ここにいるよ、って
意味を込めて。


しばらくそうしていたら、

こんこん、と部屋をノックする音と
共に、先生が入ってきた。



立ち上がって、

「すいません。」
「いえいえ。どうぞ座ってて下さい。」
「じゃあ…。

あの、二宮の様子は…。」
「おそら心因性発熱ではないかと。」
「心因性発熱…?」


先生の説明をじっと聞いたけど…


「ストレス、ですか…。」
「何か悩みや、疲れが溜まって
らっしゃるのだと…。

点滴が終わったら、自宅の方が
いいかもしれません。」



ねぇ、和。


俺、そんなに頼りないかな。

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