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DAYS

第22章 2人のBirthday M×S







散々謝り倒した俺に、


「じゃあ朝ごはんは作ってね。」

って、優しい笑顔とその言葉。



1日寝てない疲れを微塵も
感じさせなくて。



この人の優しさは、
恩着せがましさとか、厚かましさがない。

変に気を使わせないで、
ごく自然に甘やかしてくれる。



なんだかその優しさが、嬉しくて。



翔の前じゃ、うまく甘えられなかった。


俺が翔を引っ張らないと。

俺が甘やかしてあげられる
存在でないと。


そんな事を考えてるうちに、
この1年間、無理してた。






「じゃ、仕事頑張って。」
「ありがと。リーダーもね。」
「うん。じゃあね〜。」


リーダーの家を出て、
一旦家に戻った。


東京でもとうとう雪が降ってる。

昨日の夜の雪が残ってるみたいで、
うっすら白くなってる

コンクリートの世界。


俺の心と同じくらい、冷え込んだ朝。






「ふぅー…。」


仕事の前に、風呂に入ることにした。


浴室はよく響く。


1人で入ると、すぐに2人での
思い出が蘇ってくる。


初めて2人で入ったあの日。

ここでキスをしたら、
翔が逆上せちゃった日。



じわっと、こみ上げてくるもの。

それをお湯のせいにして、
慌てて浴室を出た。








「明日じゃん…。」


カレンダーの日付は、24日。

翔の誕生日は、明日。



そして、

付き合ってちょうど1年の記念日でもあって。



「何してんだ、本当に。」



去年の今頃。俺は最高潮に幸せだった。

なのに、このあり様。



「…迎えに行かなきゃ。」



分かってるけど、


帰れって叫んでる翔の悲痛な声と顔が
頭にこびりついてて。



どうしてもドアを開く気になれなかった。

どうしても迎えに行くって
電話出来なかった。

どうしても1歩が踏み出せずにいる。



「仕事、行かなきゃ。」


こうやってまた逃げる。


逃げれば逃げるほど、翔を傷つけるのに。



翔は、俺から離れてくのに。

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