DAYS
第23章 僕を焦がしてる S×N
「ほら、飲みなよ。」
「は…はぁ。」
気が付けば、大野さんと乾杯してる。
大野さんの家の方が近いから、
先に大野さんから送ってもらってた。
帰り際に、
「じゃ、お疲れっした。」
って言ったら、
「え?何で?
にのも来るんじゃないの?」
「は?」
「ほら、いいじゃん。早く早く。」
「ちょ、わわっ。」
どこにそんな力があるのか、
ぐいぐいと俺の腕を引っ張って
歩いてく。
半ば引きずられるように歩いて、
大野さんの家に上がって。
それで、今ここ。
「ぷはぁーっ。美味しいね、にの。」
「…うん。」
正直、今味なんてよく分かんないよ。
そんな俺の気持ちを知ってか、
知らないのか、
「もー、にの。釣れないなぁ。」
って、俺のグラスに
溢れんばかりのビールを注いでくる。
「こんなに飲めないよ…。」
「大丈夫だって。」
「酔い潰れたらどうすんだよ。」
1口飲めば、たぶん止まらない。
酔って。
ベロンベロンになって。
寝ちゃうのがオチだよ。
今日の俺、変なんだ。
コントロールなんて、出来そうにない。
大野さんに伝えると、
「明日、オフでしょ?」
「え?…オフだけど…。」
「俺もオフだから。
いいよ、潰れちゃっても。
俺が面倒見てやるから。」
最高級のふにゃって柔らかい笑顔。
一寸の曇りもない、真っ直ぐな笑顔が
俺には痛いほど眩しい。
大野さんの優しさは、本物だ。
中途半端な優しさとか、
押し付けるような感じが全くなくって。
この人の、器の大きさを思い知らされる。
「まぁ、飲めや。」
「うん。」
1口、ゆっくりと喉を潤す。
「…っ、はぁ。うまい。」
「だよね。仕事終わりは特に
うまい。」
「うん。」
大野さんは、何も聞いてこない。
車の中で、泣いてた事も、
何にも言わない。
ただ、飲めってビールを飲まされた。
もともとそんなに酒が強い訳じゃ
ないから、すぐに酔いが回る。
酒は怖い。
隠してた気持ちも、
思ってた本音の部分も、
全部丸裸にするんだから。