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DAYS

第23章 僕を焦がしてる S×N







「お客さん、着きましたよ。」


どこか懐かしい、俺を呼ぶ声。


あ…。

俺、あのまま寝ちゃってたんだ。

タクシーの中でどれくらい寝てたかは
分かんないけど、結構寝てたんだろうなぁ。


記憶があんまりないんだもん。




しかもね、


「お客さん。3460円になります。」



運転手さんの顔がね、
大好きな人に見えてくるの。


いくら会いたいからって、
タクシーの運転手さんまで翔さんって…。



「ふふ…。翔さんだぁ。」



寝惚けてぽろっと零れた本音。


やばいと思って、慌てて口を塞いだ。

バレちゃう、バレちゃう。



まだ覚醒してなくて、ふわふわしてる頭。


財布からお金を出して渡すと、


「ありがとうございました。」


車から降りようとした。



だけど、


「…あれ?…っわ!」


足がつかないっていうか、
タクシーから降りれない!


パニックになって、ドタバタしてたら



「お客さま?」


心配そうに覗きこんでくる。


…やっぱり翔さんだ。
そっくりなんだよなぁ。



「降ります、降ります。」
「了解しました。」



立とうとはしてるけど、
やっぱり立てない。



冬の寒さに、思わずぶるっときた。


2月だからって、舐めてちゃダメだね。





「よいしょっ。」



掛け声と同時に、立ち上がろうとしたら



「…あれ?」


自分が寝転んだ状態だったことに気が付く。



覚醒してきた頭で、状況を見てみると、


ここ、車の中じゃない。

外でもない。



「へ!?」
「あ、本当に起きたみたい。」



起きた?って、翔さん。


え…。

何で翔さんがここにいるの?



「…タクシーは?」
「とっくに帰ったよ。」
「何でここにいるの?」
「何でって…

俺の家だからだよ。」



飲みすぎだよって、
かるーく翔さんに怒られちゃった。



「何にも覚えてないの?」


こくんと頷くと、ため息が聞こえそう。



呆れないで。

悲しくなっちゃうから。

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