DAYS
第24章 じゃなくって A×N
始まり方は、とにかく曖昧だった。
いつも。
俺が家にいるのを分かってるみたいに、
ちょうどいいタイミングで
家のインターフォンが鳴る。
玄関を開ければ、決まっていつも
同じヤツで。
「相葉さん、飲も。」
「…またぁ?」
何にも持たずに来て、
気が付くと帰っていく。
そんな日が、ずっと続いてる。
「ぷはぁー…。
うまい。」
「ちょ、勝手に始めんなよ。」
「いいじゃん。
相葉さん、お腹空いたぁー。」
「はぁ!?」
冷蔵庫を開けて、ビールを持って
もう自分は始めてるし。
「いっつもいっつも…。」
ブツブツ言いながら和を見ると、
「…ダメ?」って。
また、だ。
またこの瞳で俺を見る。
俺、弱いんだよ、この瞳に。
ずるいよな。ほんっとにずるい。
俺が弱いのを分かって、
やってるんだから。
「…ったく。
何食べたいの?」
「ハンバーグ。」
「あのなぁー!
さすがにー…」
「嘘。
生姜焼きでいいよ。」
べーっと舌を出して、
イタズラっ子が俺を見てる。
他のヤツなら腹が立つんだけど…
俺はどうしてもコイツが憎めない。
「俺、どうしたんだろ。」
フライパンで炒めながら、
そんな事を考える。
生姜のいい香りが、キッチンに
充満してる。
「…なんで俺なんだろ。」
いっつも、いっつも俺。
だけど、俺からくっ付いたら
「やめて。キモイ。」って
言われるんだよ?
ひどくない?
その割には、俺に引っ付いてくる。
「もー…何なんだよー。」
「独り言が危ないよ、相葉さん。」
「…ぅわっ!」
いつの間にか、キッチンの入口の方に
和が立ってた。
「何?」
「ビール、取りに来たの。」
そう言って、空の缶を
振って見せてくる。
「もう空けたの?」
「んー?ふふ。」
弱いのに…。
「はぁ…。俺も飲みたいよ。」
「飲む?」
そう言って、缶を開けてる和。
「あ、ありがと」って受け取ろうとしたら、
「あーげないっ。」って
リビングに走ってった。