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DAYS

第24章 じゃなくって A×N










N side





時計の針は、もうとっくに
てっぺんを超えて。

3の数字を針が指す頃。




玄関のインターフォンを鳴らした。



迷惑だって、承知の上。


分かってるけど、今は
どうしてもダメで。

1人でいたくなくて。



涙でよく見えなくって、
袖で拭うけど、またすぐに見えなくなる。




「…はい。」


明らかに不機嫌そうな部屋の主の声。


「大野さん…。」
「お前、マジでふざけんなよー」


インターフォン越しから聞こえてくる、
大野さんの寝起きの声。


ああ、迷惑かけちゃったなって、
それでまた涙が出てきちゃって。



大野さんは、
そんな俺にすぐに気が付いた。



「とにかく、上がっておいで。」


さっきの不機嫌な声じゃなくって、

あの暖かい声が聞こえてきた。



その声を聞いたら、ほっとして。

力が抜けちゃって。


マンションのエントランスから、
動けなくなってた。




そしたら、


「何してんの!」


ぱっとエレベーターから出てきた人を
見れば、


「大野さん…。」
「全然上がってこないから。

ここじゃ冷えるから。
おいで。」



俺の方に、手を出してくれるけど、
その手をつかむ余裕も、力もなくて。



そんな俺を見かねて、


「ほら。」

強引に俺の腕を持って立たせると、
部屋までグイグイと引っ張っていった。






「どうしたの、こんな時間に。」
「…ごめんなさい。」
「いいから。」



よくないでしょ。


あれだけ睡眠に命かけてるような
人なのに。


こんな時間、非常識なのに。


だけど、今日は甘えたかった。

1人でなんとかしようとしたけど、
ダメだった。



「寒い?」
「大丈夫だよ…。」
「嘘つけ。体、冷えてる。

何してたの?」




相葉さんの家を出たのは、
11時過ぎだったと思う。



それから、タクシーも拾わず
歩いて。

ひたすら歩いて。



どうしてこうなったか分かんないけど、

気が付いたら大野さんのマンションに
足が向いてたんだもん。



ごめんね、大野さん。

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