
DAYS
第24章 じゃなくって A×N
A side
にのが出ていったあと。
しばらくその場所から動けなかった。
シーンとした部屋。
残されたのは、にのの飲みかけの
ビールの缶と、一滴の雫だけ。
「…ごめん…。」
今更出した言葉は、届かない。
どれだけ叫んだって。
どれだけ手を伸ばしたって。
にのが戻ってくる訳なんてないのに。
終わった。
それと同時に、気が付いた。
俺は、にのが好きだってこと。
最悪な恋の始め方だと思った。
分かったんだ。
モヤモヤの気持ちの正体が、
嫉妬だったってこと。
好きだから、嫉妬して。
モヤモヤしてたんだって。
「遅いよ、俺…。」
むなしい独り言は、
重たい部屋の空気に埋もれてく。
さっきまでいた、好きな人の
温もりに触れたくて、
にのが座ってた場所と、
同じ場所に座ってみる。
だけど、余計にむなしくなった。
かすかに温かいそこは、
確かににののいた形跡があって。
なのに、当の本人はいなくて。
それどころか、傷つけて。
泣かせた。
俺のしょうもない嫉妬のせいで。
バカだ。
気がついてたはずなのに。
俺の気持ちにも。
…にのの気持ちにも。
「はぁ…。」
もう何度目のため息だろ。
こんなことしてる暇があったら、
早く謝らなきゃ。
「そうだ…。行かなきゃ。」
もう遅いのは分かってる。
だけど、行かなきゃ。
携帯に電話をかけるけど、
一向に繋がらない。
会いたい気持ちとは裏腹に
にのは思ったよりも、遠くて。
頭よりも、気持ちが先に動く。
気が付けば車を走らせて、
にののマンションに向かった。
「寒っ…。」
暖冬だって言ったって、
今の地球はちょっとおかしいらしい。
2月だって言うのに、
まだ息は白くて。
「どうしよ…。」
とりあえず飛び出してはみたけど、
当てがあるわけじゃなくて、
すぐに行き詰まる。
マンションの近くの公園の
ブランコに腰掛けた。
マンションの入口がよく見える。
月が綺麗な夜だった。
