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DAYS

第25章 with YOU M×N








リビングに入ったって言うのに、
どっちも気が付いてくれなくて。



そっと、

「ただいまー…」って言ってみても、
大野さんの泣き声にかき消されて。



それどころか、大野さんが潤に甘えてて
潤もまんざらでもない顔してて。

優しく大野さんの背中に手を添えて、
慰めてる。



たったそれだけだって。

別に下心あって、そうしてる訳じゃ
ないんだって。


分かってるんだけど…。


変なフィルターをかけちゃってるせいか、
そんな友情にさえ嫉妬してる自分がいて。



これ以上見てたら、あらぬ言葉が
出てきそうで、やめた。



そっとドアを閉めて、
リビングを離れる。



寝室へと向かうと、
鍵を閉めて閉じこもった。


3月になったばかりだっていうのに、
もうすっかり春の陽気で。

夜でも、ずいぶん過ごしやすい。




寝室には、大きな窓がある。


その近くにイスが置いてあって、
よくここに座る。


気持ちが落ち着かない時。

何だかイライラする時。

1人になりたい時。

寂しい時。


決まってここに座って月を見る。


今日の月は何だか欠けてて。




目から、ぽろっとこぼれ出す。

1度こぼれれば、止められなくて。

バレちゃまずいからって、
手で必死に抑えて。


気付いて欲しいけど、気付いて欲しくない。

俺の心配もしてくれる?
こんなに心の小さい俺でもいいの?



「…っ、潤…。」


とうとう嗚咽が漏れだした頃。


LINEのメッセージの受信音。


見てみれば、潤からで。



『仕事、遅くなってる?
待ってるから、帰っておいで。

早く会いたい。』


潤の優しさ全部が溢れてるメール。



バカだ、俺。

やましい気持ちがあれば、
こんな事言わないよね。


いつだって俺だけを見てくれてるのに。

俺だって、いつも俺だけを求めてるのに。


潤はそれに応えてくれてるのに。



気が付いてないのは、俺だ。

こんなにたくさんの愛をもらってるのに。






『すぐに帰るから。待ってて。

帰ってらぎゅってしてね。』



ほんとにすぐに帰るから。潤のとこに。

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