DAYS
第27章 時計じかけのアンブレラ Ⅰ S×A
車に乗っても、ニノの顔が忘れられなくて。
モヤモヤはどんどん大きくなって。
目の前にいる雅紀でさえ、
もうちゃんと見えなくなる。
「…翔?」
「…。」
「大丈夫?疲れてる?」
「あっ…。ごめん、大丈夫。」
「運転変わるよ。」
雅紀の優しい申し出をやんわり断って、
家へと車を進める。
雅紀の話なんて入ってこなくて、
テキトーにうんうんと相槌を打っていたら
「…もういい。」
そう言うと、窓の外を見ると
それっきり喋らなくなってしまった。
気まずい、重い空気が流れる。
付き合ってから、初めての空気。
こんな初めていらないよ。
気まずい空気を残しながら、
車は俺のマンションの駐車場に到着。
着いても、一向に車から降りるどころか
動こうとしない雅紀。
ツンと顔を横に向けたまま。
どうすることも出来なくて、
1人テンパる俺。
コンビニに寄って、買い物するのも
忘れてることに気づく。
「雅紀、ごめん。」
「…いいよ。大丈夫。」
ぶっきら棒に言う雅紀。
「全然大丈夫じゃねーじゃん。」
「大丈夫だって言ってるじゃん。」
「だからそれが大丈夫じゃないってー…」
「いいよ、もう。
翔だって疲れてるって分かってるから。
たまには1人がいいよね。」
そう言うと、ぱっぱと荷物をまとめて
車を降りてく。
「ちょ、雅紀!」
慌てて車を降りて、
雅紀を追いかける。
後ろからぎゅっと抱きしめようとすると、
「こんなとこでやめてよ!!」
腕を力強く振り払われて。
なぜか怯えた顔をしてて。
それに腹が立った。
「そんな言い方ないだろーが!」
俺の声が駐車場に響き渡る。
自分でも分かるくらい低い声。
さっきまで怯えた様子だった
雅紀の様子がさらにひどくなってて。
「だって、見つかっちゃったら…。
また…また…。
やだやだやだやだ。
もうあんな思いしたくないの。
ごめんなさい。ごめんなさい…。」
「…雅紀?」
頭を抱えて、その場にしゃがみこんで
しまって。
それを見たら、怒りなんて
忘れて俺もしゃがみこんだ。