DAYS
第27章 時計じかけのアンブレラ Ⅰ S×A
しゃがみこんで、雅紀の顔を覗けば、
涙がいくつも流れていってて。
体がガタガタと震えてるのが分かった。
「雅紀!」
肩に手を置こうとすると、
「やっ!触んないで!
もし誰かいたら…また…。
…翔まで失いたくないよ…。」
「大丈夫だから。落ち着いて。
ほら、ゆっくり深呼吸して。」
「やだやだやだやだ。」
雅紀の声はどんどんボリュームが上がって、
叫び声のようなものに変わってて。
そんな雅紀を何とか落ち着かせようと
出来る限り優しい口調で話し続ける。
「大丈夫。誰もいないから。」
「やだやだやだやだ。」
いきなり立ち上がると、
道路のほうに駆け出していく雅紀。
「雅紀、どうしたんだよ。」
こんなに取り乱した雅紀を
見たことなんて1度もなくて、
頭がまったくついてこない。
俺の存在もとんでしまっているのか、
まったく俺のほうを見ていなくて。
目の焦点が合っていなくて、
どこか遠くを見ている雅紀の瞳。
その瞳には、深く濃い恐怖の色が出ていて。
雅紀を追って、駐車場の中を走る。
雅紀はもう、駐車場の出入口の
ほうにまで行ってて。
「雅紀!」
いくら叫んでも、俺のほうを
見るような気配はなかった。
「こっちに行かないと…!
ここはダメ。
ここにいたらまた…。」
ずっとそんなことを口走りながら、
走り続けてる雅紀。
駐車場の出入口の辺りで、
また雅紀がしゃがみこむ。
やっと追いついて、
後ろから声をかける。
「雅紀、悪かった。
だから取りあえず、部屋に上がろ?
な?」
「ごめんなさい…。」
俺の声が届いていないようで。
もどかしくて。
イライラして。
「取りあえず行くぞ。」
強引に雅紀の手を取って、
立たせようとしたら、
さっきよりもひどいパニックに
陥っていく雅紀。
「嫌だ、やめて、お願い。」
必死に身をよじって、
俺の腕を振り払おうとする。
ぎゅっと力を込めるほど、
叫び声は大きくなって。
その声に驚いて、力が緩んだ瞬間
「あ…っ!」
けたたましいブレーキの音。