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DAYS

第27章 時計じかけのアンブレラ Ⅰ S×A











あの言葉が忘れられなくて。



ごめんねって言った相手は、

俺の名前じゃなかった。



『ごめんね…裕くん』


誰に謝ってたの?

何があったの?

目の前にいたのはソイツじゃない。
ずっと俺だったろ?

ずっとずっと一緒…だったんじゃないの?



考えれば考えるほど、
ますます分からなくなっていく。


さっきまであんなに幸せだったのに、
一瞬ですべてが奪われてしまったみたいで。



「…雅紀。」


手術室の前のイスに深く座って、
俯くほかなかった。





静かだった病院の廊下に響く、
突然響く足音。


「翔さん。」


聞き慣れた声にぱっと振り向くと、


「ニノ…。」
「相葉さんは!?」


はぁはぁと激しく息を吐きながら、
言うニノ。

それだけで、ニノがどれほど
急いでここまで来たのか分かった。



「今、手術室に…。

早かったね…。」
「ええ…。マネージャーから聞いて、
仕事を巻いてきましたから。」


俺と目を合わそうとせず、
ずっと手術中のランプを見てる。


「相葉さん…。」


ぽつりと小さな声で、名前を呼ぶ。


その様子に、楽屋でのニノの表情が
またフラッシュバックしてきて。


あの寂しげで苦しそうなニノ顔。




「何があったんですか?」
「…。」
「…翔さん?」
「あ…。

いや、それがよく分からなくて…。」
「…そうですか。
翔さんは、ケガはないんですか?」


俺を気遣う、ニノの優しい言葉。

それさえも、今の俺を苦しめるには
十分な言葉で。



「…それ、皮肉?」
「…はい?」
「お前がケガしとけばよかった、とか
思ってるんじゃないの?」
「翔さん、落ち着いて。」


1つ言ってしまえば、
もう止まらなくて。

止めなきゃいけないのに、
溜まっていたものすべてが
ニノに向かっていて。


不安、憤り、情けなさ、
怒り、絶望。

そのすべてが。


まだ言い足りなくて、
ニノのほうを見ると


ぽろっと零れた涙。



それを見て、
やっと冷静になった。

と同時に、
ニノのことを傷つけた。

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