DAYS
第27章 時計じかけのアンブレラ Ⅰ S×A
真っ白な天井。
独特な、あの消毒液のにおい。
無機質で一定な機械音。
それだけで、俺が今どこにいるのかは
明白で。
「…あれ。俺…。」
俺、さっきまで廊下にいたのに…。
気がつけば、個室であろう
病室のベッドの上だった。
ゆっくりと体を起こすけど、
めまいがしてふらついて。
どうしても体にうまく力が入っていない。
「こんなとこに、いる場合じゃ
ないのに…。
雅紀のとこにいかなきゃ…。」
動こうにも、点滴が邪魔をしてて。
うまく前に進めない。
体も言うことを聞かない。
そんなことにも腹がたつだけで。
手についてる点滴が邪魔で、
引きちぎった。
血がつーっと垂れた。
「あ…。」
とくとくと、細い筋を作って、
腕から流れていく。
その紅い血が、
また俺を深い闇へと引きずり込んでく。
記憶がフラッシュバックする。
地面に倒れ込む雅紀。
流れていくのは、真っ赤なー…
「あ、あ、あぁぁぁ!」
嫌だ。
行くなよ。
こっちにこいよ。
なんでそっちに行っちゃうの?
何があったの?なぁ。
また俺は、お前を守れないの?
また俺を置いてくの?
俺じゃない誰かの名前を呼ぶの?
俺はまたこんな思いをするの?
「違う…!違う!」
分かってる。
これは現実じゃないって。
だけどその闇に、
どんどん引きずり込まれてく。
「あ…、違う、違う…。
雅紀。お願い、ここに来て。
雅紀…。雅紀…。」
呼んでも呼んでも雅紀はいなくて。
俺のそばに来てくれなくて。
まただ。
また雅紀は、俺の近くにいない。
あんなに近くにいたのに、
心はどこか離れてて。
泣いた。
叫んだ。
雅紀に気付いてほしくて。
だけど、やっぱり来てくれなかった。
代わりに来たのは、
俺を押さえつける看護師たちと、
医者が1人。
「落ち着いてください!」
そんな声が聞こえる。
おかしいなぁ。
俺はこんなに冷静なのに。
ただ雅紀に会いたいだけなのに。
それだけなのに。